企業による従業員に対する制裁で知られるいわゆる懲戒処分には、主に6種類が存在しています。
最も軽い戒告や譴責、訓告は名称の違いはあるものの、企業によって使われている言葉が異なるだけで、意味はほぼ同じと捉えて大丈夫です。
端的にいえばこれらは問題を起こした従業員に対し、指導を行うのが主な内容となります。
つまり給与が減額されるような経済的制裁を伴わないわけです。
退職金に影響がないと思われますが、しかし昇給や賞与などの査定に影響しないとも限らないので油断禁物です。
しかし一般的には、更に重い処分において査定に影響すると考えるのが妥当です。
戒告と譴責や訓告は、一線を越えれば査定に関わり、昇給や賞与が少なくなることを警告する意味と捉えることができます。
懲戒処分の種類
減給
減給は明確に給与の減額が行われる懲戒処分で、従業員の問題の程度によって減額されることになります。
ただ法的に減給できる限度がありますから、企業の判断で好きなだけ自由に減給が行えるわけではないです。
具体的には1日あたりの給与の半額が上限となります。
1ヶ月あたりの勤務日数にもよりますが、給与が月に30~40万円程度であれば減額される金額は5千円ほどです。
更に、1回の問題に対する減給は一度までで、数日分や3ヶ月といった形で減給はできないので注意が必要です。
減給にもやはり、それ以上は更に重い制裁が待っているという警告の意味がありますし、当然ながら度が過ぎれば懲戒解雇に発展することもあり得ます。
とはいえ、減給はそれで制裁が終わるので、退職金に響くことは考えにくいでしょう。
出勤停止
出勤停止は一定期間の出勤が禁じられる懲戒処分で、その間の給与は無給になることから減給よりも重いペナルティです。
勿論、出勤停止の期間によって減額される給与が決まりますから、30日間となれば1ヶ月分がまるまる支給されないことになります。
この出勤停止の期間には法的な決まりがないので、一見すると無期限もあり得ると思われますが、実際には設けられている就業規則で決まります。
出勤停止は給与が減る以上に、人によっては社内で噂になったり、制裁が解かれてから出社した時にいじられる方がキツイといえます。
つまり、精神的にも制裁されることになるので、減給と比べて堪える精細となります。
降格
降格は従業員の資格が下げられる処分で、役職も下がることがある比較的重い懲戒処分です。
出勤停止も堪えますが、降格は以降の肩書が変わったりそれに伴い給与も減るので、長く影響が続く制裁となります。
期限がないので再び昇格しなければ役職も、給与も元に戻らないのがこの降格の怖いところです。
役職が下げられるのは相当なお問題を起こした場合ですから、通常はここまで重い懲戒処分が行われることはないです。
もし降格処分が下されるとしたら、度重なる問題で何度も制裁が加えられているか、余程大きな問題を起こした場合です。
諭旨解雇(諭旨退職)
諭旨解雇や諭旨退職は、企業が従業員に対し退職届を勧告して、退職届の提出がなければ懲戒解雇という処分方法です。
懲戒解雇が従業員にとって重く不利益が大きくなると判断される場合に、退職届を提出するチャンスが与えられることになります。
諭旨解雇と諭旨退職の違いは呼び方で、意味は殆ど同じに捉えられます。
いずれにしても、懲戒解雇を避ける最後のチャンスとなるので、制裁の対象となる従業員はよく考えて退職届を提出するか判断することが求められます。
この懲戒処分の場合の退職金は、会社の規定によって変わってきますが、全額支給の企業が多い傾向です。
懲戒解雇
懲戒解雇は最も重い懲戒処分で、解雇予告手当もなければ会社からクビが突きつけられ、クビにされたという事実が残る制裁です。
会社が従業員を辞めさせる処分ですから、それだけのことをしなければ解雇にはなりませんし、法的にも従業員は守られているので安易に解雇できるわけではないです。
退職金は一部が支払われるケースはありますが、全額支給が行われる可能性は非常に低いでしょう。
このように、懲戒処分は段階によって従業員の経済的な不利益が大きくなっていきます。
参考:懲戒解雇の場合に退職金の不支給は違法か?詳しく解説します!
諭旨解雇や諭旨退職までなら退職金はほぼ全額支給される
諭旨解雇や諭旨退職までなら、退職金はほぼ全額支給されるので、その点は心配がないと思われます。
懲戒処分には様々な理由がありますが、無断欠勤や度重なる早退、遅刻の常習なども処分の対象となります。
それから故意でないとしても企業に損害を与えたり、パワハラを始めとしたハラスメントも懲戒処分の対象です。
経歴詐称や横領に業務命令の違反、機密にあたる情報の漏洩なども懲戒処分に十分な理由になるので注意です。
私生活における犯罪も、実は懲戒処分に繋がることがあるので油断できないといえるでしょう。
副業禁止なのに副業をしている場合も、企業に発覚すれば懲戒処分となるので気をつけたいところです。
まとめ
懲戒処分は、企業の裁量で行われると考えがちですが、就業規則に根拠となるものがなければできないです。
いずれも従業員にとっては影響がある処分ですから、重い処分には相応の根拠が問われるので、企業は退職金の支払いも含めてしっかりと就業規則に記載を行うわけです。